ニュージーランド,  学校,  雑感

生態系保全

ニュージーランドに来て感覚の違いに戸惑うこともある。
僕も現地の小学校で働き、子どもたちも現地の学校に通っているので、観光で回るのと比べてよりディープにニュージーランドというものを感じる機会がある。

その1つが生態系の保全についての感覚だ。
普通の家庭の人が自身の庭などにネズミや、ときにオポッサム(フクロネズミ)、イタチなどの罠をしかけていたり、もっと積極的な人は定期的に近隣の自然公園にしかけられている罠の見回りのボランティアなんかにも携わっている。

僕たちが通っている学校の環境プログラムにも島や近くの自然公園や湖で外来種の駆除の取り組みを生徒と一緒に取り組んでいる。
多分多くの日本人にとってみては馴染みの少ない行いなのではないかと想像する。
僕の感覚としてはどうしても、「こんなに広大な面積のところに、これだけチマチマと罠をしかけて、ちょっとネズミなどの害獣を捕獲しても焼け石に水なんじゃないだろうか。」とそんな疑念がこの様な取り組みに触れる度に頭から離れない感覚だった。

しかし、しつこくこのような体験を何度も繰り返す中で、そして自らも学校に隣接するブッシュで生態系保全の取り組みを導入するに際して、色々な人の話を聞いたり、国内の色々な実践事例を調べたりする中で、ニュージーランド特有の生態系に関する意識の違いについて身体に染み込んでいっているように感じる。

まだまだその入口に足を踏み入れた段階だが、今のこの感じを記しておこうと思い、書き始めている。

5年生と一緒に定期的にブッシュの罠を見回ることにした

僕もニュジーランドに引っ越しをする!と決めて実際に移り住んでいるのだが、事前情報が豊富にあったわけでは決して無い。多くの日本人と同じ様に「羊が多い」くらいのレベルだったと思う。

ニュージーランドはポリネシア地域からヒトがカヌーを使ってやってきたのが1,000年ほど前と言われている。
捕鯨、オットセイ漁、布教活動の為にヨーロッパの人たちが渡ってくるようになったのが200年ほど前。
英国君主と先住民族マオリとの間で締結されたワイタンギ条約は1840年。
(因みにアメリカ独立宣言は1776年。フランス革命は1800年。日本にペリーが来航したのは1853年。そう考えるとニュージーランドは本当に新しい国。)

8,500万年前にニュージーランドに相当する大陸部分が超大陸から分離されたと言われており、そこからニュージーランドの動植物は独自の進化を遂げたらしい。
その独自の生態系はヒトの外部からの侵入で大きく変化します。

ヨーロッパ人の入植のタイミングで疫病が流行り、多くのマオリが病で亡くなったそうですし、外来種の侵入により多くの在来種が絶滅しています。

ヒトがニュージーランドにやってくる1,000年ほど前まではニュージーランドには3種類のコウモリしか哺乳類は存在せず、鳥の鳴き声が響く土地であった、という歴史が今になって何となく実感として湧くようになってきました。

グローバル化によって世界が均質化していっているのは何もヒト社会だけでなくて、多くの動植物の独自の生態系もある意味均質化の方向をたどっているのかもしれません。

ニュージーランドには本当に世界的に見てニュージーランドにしか存在しないという動植物が多数存在しており、(分かりやすい例で言うと飛べない鳥キーウィなど。)その存在が外来種によって著しく脅かされているとのこと。

世界的に見て絶滅種の数がニュージーランドで多いのはこの事実に起因している。

この独特の生き物達の保全には、それらの外来種を駆除したり、抑制する必要があり、ニュージーランドの国策として「Predator Free 2050」(Department of Conservation:自然保護省)というものが謳われており、2050年までにネズミとオポッサム(フクロネズミ)とイタチをニュージーランドから一掃することを目指していることからその凄まじさを感じ取ることが出来る。
(日本でいうと国策として2050年までにカーボンニュートラルを目指す!という掛け声と似ている雰囲気でしょうか。)

何が良いか、悪いかというのは分からない。
一口に害獣と言っても所変われば愛されたり身近な対象だったりする。

ただ、それらの存在が、ここに元々生息している種の存続を危ぶむとなるとそれらについて真剣に考えなくてはというのも頷ける。

日本は同じ島国であるが、ここまで徹底した種の保存というものを感じる機会は少ない。
同じ様な事例は小笠原諸島などに行くともしかしたら同じ様な温度感を感じるのかもしれない。

まだこちらに来て2ヶ月程だが、色々と考えさせられる事が多い。

春休み中に罠にかかったノルウェーネズミ

こちらに来て初めて野生のハリネズミを目撃したが、まだフクロネズミは見たことがない。
大きいもので5kgほどにもなるというからかなり大きい。
実際に罠で捕まえることが出来たらどんな感情が湧いてくるのだろう。

本当にまだ手探りだが、動きながら色々と経験、学んでいきたい気持ちです。

今はこの生態系保全活動であったり、植物薬学(マオリの人たちがどのように植物と向き合ってきたか、その古の知恵)に興味があります。
どんどんと学校に色々な人を巻き込んで生徒と一緒に学んでいきたいです。

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