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そんな記念日

足裏に心地良い疲労感が残り、心なしか肩周辺が筋肉痛。
金曜日の放課後、息子が「お父さん今朝走ってないでしょ?一緒に走ろ。」と声をかけてきたので一緒に走ったのである。
最近息子は家から森をグルッとして帰ってくる約7kmのランニングをしている。
100日間を目標にしているらしい。
この100日間をこなすのが先か、お母さんや妹たちと合流できるのが先か、願掛けの意味合いもあるのかもしれない。
息子に触発されて、僕も朝の時間最近同じコースを走っていた。
息子はタイムも計っているので、試しに僕も計ってみる。
僕はタイムなどを計ってそのタイムを縮めていくという努力よりも気持ち良く走るというところに重点を置いていたのだが、試しに計ってみると息子のタイムの早さに驚く。
そんな息子に「一緒に走ろ。」と声をかけられたのである。

子どもたちとのこの子育て期間の時間は有限、なるべく一緒に時間を過ごし、なるべく楽しいことを一緒にしたいと考えている僕は、金曜日の夕方いくつかやりたい用事もあったのだが「いいよ。」と返答。
ただし、「お父さん遅いよ。」と息子に確認し、息子も「いいよ。」と答える。

事前の息子の7kmのタイムは31分。因みに僕はジョギングで約45分。
コースはグーグルさんによると、家から森までが1.8km、森の中が3.6km、の計約7km。

放課後すぐに家に帰り3時半に家を出発。
ジョギングペースで、少ないながらもいくつか言葉を交わしながら森に進入。
僕のジョギングペースもいつも1人で走るよりも1.2倍くらいの速さ。
余裕で僕のジョギングペースについてくる息子。
なんとなく僕の中に眠らせていた、息子との競争心が芽生えてくる。
僕も40を超えたとはいえ、学生時代は熱心にサッカーボールを追いかけており、周りの大人に比べて体力に自信が無いわけではない。
学生時代を思い出すように、ちょっとペースをあげてみる。
あれ?お父さんペース上げたのかな?と思いながらもついてくる息子。
こうなったら、どこまでついてこれるのか根比べだといわんばかりに、僕はさらにペースを上げて(界王拳3倍)息子との根比べ対決を図る。(もってくれよオラの身体!)

息子は更に思う、お父さんペース上げてるな。
僕の中では、もうジョギングなんて関係ない、こうなったら真剣勝負だ!と走れる限り森の中をハイペースで走り続ける。
息は上がり、足の回転も決して悪くない、身体が少し重たいのかもしれないがそれでも自分でも納得のいく走りが出来ている。
それでもいつまでもそのペースについてくる息子。
いつまでついてくるんだ。
森の出口を意識出来るような地点で、このままこのペースで家まで行くことは無理だと悟る、僕の根負け。
「泰ちゃん、先に行っていいよ。」
と息子に先を譲り、僕はショートカットの道を行って戻り始めることを告げ、息子はぐるっと回って帰る本来の道を進む。
軽快な走りを続ける息子の後ろ姿をみて、完全なる敗北感を感じる。

モバイルゲームで負けても何とも思わない、最近息子が頑張っているバドミントンもきっと本気で勝負してももう敵わないのだろう、色々と敵わないものがチラホラと出てきているとはいえ、この7km走で圧倒的に負けてしまったときには胸にくるものがあった。

スピードとパワー

ヒトが長い歴史の中過ごしてきた狩猟採集期間の中で培ってきたDNA。
アウストラロピテクスは持久力とチームワークを武器に他の獲物の狩りをしていたと聞く。
その持久力で息子に超えられて行ったのを目の当たりにして、何か1つ大事なものが僕の手を離れていった感覚。
寂しい感情もあれど、不思議となんか肩の荷が1つ降りたような安堵感や嬉しい、誇らしいといった感情。
ちょっと早すぎじゃないか、という気持ちも15%くらいあるので、密かに僕はこの敗戦を受け入れつつも、リベンジの機会を狙いたいという気持ちも無いわけではない。

走れる身体

というのが今の僕のキーワードの1つ。
そんな記念日。
僕は大人気なく、手加減が苦手で割と色々と息子に対して容赦なく勝ちを拾いにいってしまう分、息子もなんだか嬉しそうであり、1つ自信がついたような感じもする。
こうして1つ1つ明け渡していく闘いなのだろうが、その1つ1つをもうちょっと先送り出来るように、自分自身もこれからも鍛えていきたいと思う。
そんな記念日。

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