固有種の保護と生物多様性
僕は学校に隣接する約1haのBush(林)の管理を担当しています。
こちらに来て半年が経とうとしていますが、まだ手探りの部分も大きく、周りの生徒、教職員、保護者とのコミュニケーションを図りながらあるべき形について考える日々です。
ほとんど何の予備知識もなくこちらにやってきて働き始めたので、今でも日々新しい発見の連続で全く飽きません。
先週は日々生徒と行っている害獣駆除の罠に今年度初めてポッサムがかかりました。
今年度初めてだったというのもあり、多少生徒と興奮気味に木の上に設置している罠からポッサムを降ろし、一緒に観察します。
「大きいね」「毛がふわふわだね」「オスかな?メスかな?」「メスだね」「ポッサムは有袋類だからメスならお腹に育児嚢があるはずだよ」「赤ちゃんが中にいたりして」
そんな風に生徒と会話しながらお母さんのお腹の中を覗いてみると今にも毛が生えてきそうな、大きく育った赤ちゃんがまだお母さんの乳首に吸い付いているところでした。
ポッサムは受精後10日程お母さんの体内で育った後(有袋類は胎盤が未発達な為早くに体外に胎児を出して袋の中で育児するみたいです。)、1cmくらいの大きさで体外に出てきて、その後4ヶ月くらい(毛も生えて目も開くまで)お母さんの袋の中で育つみたいです。
生後5−6ヶ月で育児嚢から出てくるみたいですが、その後2−3ヶ月はまだお母さんの袋の中に入ったりもするみたいです。
カンガルーの赤ちゃんがよくお母さんの袋の中に入っている、そんなイメージですね。
有袋類に馴染みの無い僕たち日本人にしてみたら、とても不思議な感覚です。
そんなニュージーランドも、人類がこの島国に上陸する800年程前までは、哺乳類といったら2種類のコウモリだけでした。
ニュージーランドに生息している多くの鳥が、天敵がいないが故に飛ぶことをやめ大型化した例に似て、これらコウモリも飛ぶ必要がなくなり、多くを陸上で歩いて生活している様です。
そんな話を聞いたり、実際に感じたりすると、環境がその生物種に及ぼす影響の大きさを感じずにはいられませんし、ニュージーランドのこの固有の生態系であったり、種の特異性や希少性にはとても価値があるものの様に感じます。
こちらに来た当初は、国をあげての大規模な外来種駆除について多少の違和感を感じたり、新鮮さを感じたりもしたものですが、色々な人とお話をしていくうちに、段々とニュージーランドのこの固有種や生態系について、より興味を抱くようになってきました。
人間社会に目を向けるとどこか一様な雰囲気を感じたりもしてしまうのですが、8000万年前にゴンドワナ大陸から分離して独自の生態系を築きあげていった人間以外の種に目を向けると、その深遠さに恐れ入ってしまう思いです。
町に暮らしながらも、そういった自然にまつわる時間を取れていることがとてもありがたいことだなと感じますし、僕にとってはとても大事な時間になっているなと思います。
今年度から授業を受け持つことになりました。
低学年、中学年、高学年どのクラスもまんべんなく授業をすることになったので、色々な生徒や先生たちとこれからより密に関われると思うと、今後待っているであろう色々な出会いにドキドキ・ワクワクします。
ブッシュの除草作業など熱心に取り組んでいる保護者さんも巻き込んで上級生と一緒に除草作業もしています。
学校とか教育とか、人生の先輩から後輩への伝達だったり、色々と意義がありそうな気もしています。
たくさんの人生とすれ違っていく日々の中で、何かお互いに少しずつでも良きものを交換こしあえたら、それはそれで良い思い出になるのかもしれません。
一期一会の人生
お互いの名前を呼び合うことから始まって、目の輝きの交換こを1つでも多くしていきたいです。
授業が始まって1週間が経ちました。
最初はブッシュで行っている活動などの紹介です。
ネズミが捕れたり、ハリネズミが捕れたり、飛べなくなって隠れている鳥をみんなで観察したり、ナナフシを見つけたり、ブッシュをあるくだけで色々な発見があったりします。
ハリネズミは学校が始まってから4週間で5匹捕獲しました。
ニュージーランドでは固有種の昆虫や爬虫類を食べる害獣として指定されています。
可愛いですけれどね。
生徒と一緒に駆除しています。
目に見える形でブッシュが変わっていくのをみんなで経験していくのは気持ちの良いものです。
去年の8月に植えた幼樹が大きくなっていたり、自然発芽している固有種の樹種をみたりすると嬉しい気持ちになります。
ブッシュを通じてニュージーランドの環境について生徒と一緒に想いを馳せていけたら良いんじゃないかなと思っています。