不思議の国のアリス
「Yosukeこっちに来て一緒にご飯を食べようよ。」
何かの用事の時に高学年の建物に行った時に先生に声をかけられる。
見ると机の上にクロスがかけられて蒸し鶏、野菜のオーブン焼きなどの料理が並んでおり、お皿とフォーク・ナイフのセットがたくさん用意してある。
そんなある月曜日の昼休み。
ぞろぞろと高学年の先生たちが集まってくる。
よく分からないうちに食事前のお祈りが始まり、みんなでいただきますをする。
生徒たちは教室の外で元気よく遊んでいる。
あとで話を聞いてみると、声をかけてくれた先生が朝からみんな分のお昼ご飯を準備してみんなで一緒に昼食の機会を作ってくれたということらしい。
忙しかった前の週。
ホッとみんなで一緒のテーブルについて美味しいご飯を食べる。
他愛もない話をする。
その先生はデザートも用意してくれていた。
その高学年の建物に併設されているキッチンを使って。
温かく出来立ての美味しいごはんをみんなで食べるというのはなんと幸せで豊かな気持ちになることだろう。
ちょっとしたチームワークの工夫。
公立の小学校でこんな事が行われるのだなとビックリした体験。
本当にところ変われば常識が変わる。
勉強になるし、自分の世界が広がるのを感じる。
最初来たときはどのようにしてそれぞれの時間割が進行しているのか「?」が大きかったが、段々とそれにも慣れてきて、僕も時折教室から子ども達をピックしては一緒にBushで過ごしたり、Science Fairの準備をしたりとするようになってきた。慣れて来たものだ。コミュニケーションだな。
本当に普段のコミュニケーションの重要性を感じる。
普段の何気ない会話で色々な情報の交換を行っている。
その雑談力の質をどんどんと上げていきたいというのが最近の僕の課題。
週に1回行われる全教員ミーティングと週に1回行われるチームミーティング。
そんなミーティングの雰囲気もフラットな感じで面白くそして心地良い。
誰もが下の名前で呼び合い、恐怖の少ない環境で闊達に意見交換を行う。
新しいことにも果敢にチャレンジし、毎年同じことの繰り返しということが少ないような、そんな気がする。
(まだ1年経っていないから良く分からないが、現場はなんだか新しいことでバタバタしていることが多い。)
泰ちゃんは来年は飛び級してYear 8になれないかどうか相談しようと思っているが、今日ちょっと話した感じ「たぶん大丈夫だと思う。」とのこと。
柔軟に生徒の状況に応じて対応してくれる感じが凄いなと思う。
生徒にとって何がベターなのかな、学校がその生徒に何をしてあげられるかなと常に生徒を中心に考えようとしている姿勢がそれを可能にしているのだと思う。
日本や他の東アジア、インドなどの学校と比べるとそんなにバリバリ勉強するという感じではないと思う。受験も無い。だから「ニュージーランドの子たちももっと勉強すれば良いと思う。」という様な声が時たまそういう前述の国の人々の口から聞こえてくることもある。
大学への意識もそれほど大きくないのかもしれない。
最近そんな話題を好んで人とすることが多いのだが、「Trade’sの職業の人だったら良いけれど」という話が良く聞こえてきて、最初は貿易関係の仕事なのかなと思っていたが、だんだんと話していく中で「職業技能職」のことなんだなと気付く。
配管工(Plumber)、電気技師(Electrician)、大工(Builder)、溶接工(Welder)、塗装工(Painter)、自動車整備士(Auto Mechanic)などの職種の事を指すらしい。
泰ちゃんも勉強好きじゃない、学校好きじゃないっていうけれど、こういう手に職をつけて生きていくという道も良いのかもしれないと思った。
本人はスポーツが好きで、「ずっとスポーツをして生きていけたら幸せなんだけどなぁ」と言っていたりする。
どうしたら幸せに生きていけるんだろうなとアンテナを張りながら生きていくのは大事なことかもしれない。
「お父さんが泰ちゃんだったら・・・」なんて話をたまにしたりするけれど、昨今のAIの台頭であったり、社会の変化のスピードは凄まじく、いったい泰ちゃん達が大人になるころにはどんな社会になっているのだろうと思う。
世界各国からニュージーランドに移住してくる人たちもいれば、ニュージーランドからオーストラリアに移住していく人もいる。
どこでどう生きていくのか、考えて動ける人でありたい。
僕がまだ保育園児か小学生だったころに初めて「不思議の国のアリス」を観たが、不思議な世界観に困惑したが、あの世界ではあれが当たり前だったりするのだろう。
色々な世界があるものだ。
面白いと思える環境に身を置いていきたい。
スクールフェンスを再利用して生徒と一緒に作ったウッドデッキ。
最近の僕の授業場所。
8月にはまた1000本近くの植樹を予定している。
どんどん心地良い環境になっているのを僕自身みんなと感じながら過ごしていけるのが嬉しい。
因みに僕がやってきた時の状態。
このBushを通じて僕も色々なことを学ばせてもらっています。
学ぶって楽しい。
英語も頑張って勉強してもっと上手くなりたいなって思うけれど、同時にそれと同じくらい、「この人の話をもっと聞きたいな」って思ってもらえるようなそんな人になりたいなって思います。